コミッショニング及びクオリフィケーション(適格性評価)- 原料から最終包装まで -

by Giuseppe Gallo CQV Manager & Associate Partner @ PQE Group

 

医薬品がどのようなプロセスを経てあなたの手元に届くのか、想いを馳せたことはありませんか。使用目的に合った形、承認された姿で医薬品があなたの手元に届くまでには、それはそれは長く複雑な道のりがあります。

「コミッショニング及びクオリフィケーション」(Commissioning & Qualification、以下 C&Q)の観点から言えば、薬ができるまでの旅は、原材料や賦活剤のステージから包装を終えて市場に出される直前の貯蔵のステージまでとなります。

C&Q From Raw Material to Final Packaging_Site Banner

コミッショニング及びクオリフィケーションの環境

C&Qの下では、原材料に使用するものから包装に使用する、ありとあらゆる機材・機器類に最新のGMP(cGMP)及びFDAの規制を適用することで、それらの機材・機器類が本来の使用目的に適していることを保証する認定書を取得できます。

最近ではその規制がますます厳しくなっており、医薬品製造の現場もそれに応じて対策を取らねばならなくなっています。そのため、規制への対応のベスト・アプローチを探るというC&Qの役割がますます重要になってきているのです。

まず最初に、C&Qを正しく理解するために、ISPEガイドに沿って用語の定義をしましょう。

  • コミッショニングとは、「周到に計画されて、文書化され、かつ管理されたエンジニアリングの手法であり、エンド・ユーザーに対する施設/設備・システム・機器のスタートアップ~引渡しに適用される。その結果、設計要求に合致し、ステークホルダーの期待に沿った安全で機能的な環境、状況を提供することになる」[1]ものを指す 。
  • クオリフィケーションとは、「製品品質に対して影響を与える施設・設備・機器の全てが、承認された規格に準拠していることを文書記録によりベリフィケーションする」[1]ことを指す。

つまり、クオリフィケーションは、施設・設備・機器に対する意味合いが強いコミッショニングに比べて、製品品質に対してより重要な意味を持っているわけです。

クオリフィケーション段階に移行する前に機器の供給者が実施するコミッショニングを行うことで、次ステップで要する時間と努力を最小限にする利点があります。

C&Qの適用

バイオファーマの各社では、以下に挙げるように、それぞれの目的に応じたプロセス用機材・装置及びシステムが非常に幅広く、現在使用されています。

  • 原料・原薬処理用の機材(攪拌機、反応炉、乾燥機など)
  • 無菌処理用機材(フリーズドライ装置、オートクレーブなど)
  • 注入装置(充填器など)
  • 固形経口薬用製造機材(打錠機、コーティング機など)
  • 包装ライン機材(ラベル貼付機、ブリスタ包装機など)
  • 貯蔵用機材(倉庫、培養器、冷凍庫など)

装置、機材やシステムには、製品品質に直接的な、或いは間接的な影響があるのか、又は影響が皆無であるのかによって、それぞれ異なる法規制の適用があり、遵守が求められるcGMP標準が設定されています。 

もしもその機材が製品品質に直接の影響がある場合には、C&Qの全評価を実施する必要があります。一方、直接的でない影響に限定される場合には、コミッショニング評価のみが求められることになります。 この場合、どのようにコミッショニング評価を行うべきか、製品品質の面ではなく、運用上の観点又は安全性の観点からその重要性をC&Q専門家に判断してもらう必要があります。

システム・クオリフィケーション・プログラムでは、バリデーションマスタープラン内にその焦点を明確に規定し、明記しておく必要があります。この文書では医薬品ライフサイクルの主要な段階全てに渡って使用する機材・装置やシステムを、以下の通り、分析しなければならないことになっています。

  • システムの重要性を、製品品質への影響の観点からリスク評価を行う。これには、クオリフィケーションサイクルの適用範囲及びその詳細の決定をするだけでなく、システム、装置及び機材によって引き起こされる可能性のある製品品質へのリスクにどのようなものがあるかをデザイン段階までに明確に規定することに主要な目的がある。
  • システム及び機材のユーザー要求仕様書(URS)及び機能設計仕様書(FDS)の構築。
  • C&Q実施段階での建物のあらまし:工場受入試験(FAT)、現地受入試験(SAT)、設計時適格性評価(DQ)、据付時適格性評価(IQ)、運転時適格性評価(OQ)及び稼働性能適格性評価(PQ)。
  • 責務の定義及び手順など。

最善の戦略構築法

低労力・低コストでC&Qプロジェクトを推進する最善の戦略は、リスクマネージメント分析を効果的に実施することです。

品質リスクマネージメント(QRM)によるアプローチを行う場合には、医薬品製品のライフサイクルのどのステージでも同じように実施することが大切です。その際、クオリフィケーション評価及びバリデーションを適用する範囲やその深度をどの程度に設定すべきかの決定は、品質リスクマネージメントシステムにおいては、対象とする施設、装置、機材及びプロセスに実施し、文書化し、その理由も確立したリスク評価の結果に基づいて行いましょう [2] 

製品品質に直接影響を与えるシステムの場合、適用するリスク評価は、製品品質へのリスクを検証するQRM を単純に適用し、そのデザインや手順を見直し、品質への影響を受け入れ可能なレベルにまで軽減する措置を検討することになります。

まずは、この評価・対応の取り組み全体の流れを十分に理解することが重要で、誰がその責任を担い主導するのかを決定する必要があります。そのC&Q評価者に必要なスキルには、情報の整理・処理と細やかに管理する能力に加え、製品及びその製造プロセスに精通していることが重要であり、それがこの評価プロジェクトをタイムリーに推進し完了させるキーになります。

我々C&Q評価のエキスパートが、これまでに培ってきた経験とスキルをフルに駆使し、お客様の本当のニーズを十分に把握しつつ、お持ちのシステムをその使用目的に合うように、お客様の要求に合ったC&Q戦略の構築を行います。

C&Q戦略プロジェクトを構築するお手伝いをするのに当たり、機器・装置の供給者から入手された、お客様の要件に沿って供給者が実施したテスティング・コミッショニングの記録を、我々のC&Q評価エキスパートと共有してくださることをお願いしております。これらの記録は一見完璧のように見えますが、C&Q評価エキスパートが、お客様のご要件と現状の差異を精査・分析し、情報の重複を一掃しながら対応策を提示させていただくことで、機材・装置供給者をサポートすることにもなり、併せて、効果的な協働チームとなることを目指します。

弊社のアプローチ 

お客様の環境やニーズは個々に異なるため、一概に同じ手法を用いた解決策をご提案することはございません。我々C&Q評価のエキスパートは、これまで培ってまいりました実績とスキルを以って、お客様の環境やニーズに合わせて臨機応変に規制対応の解決策をご提案させていただきたいと考えております。

尚、C&Q評価を実施するのに当たり、cGMP及び ISPEガイドではアプローチのために様々なツールを提供しておりますが、ツールの使用方法につきましては、C&Q評価エキスパートにご一任ください。

C&Q評価エキスパートの目標は、あくまでも、評価対象となっている機材、装置、システム、及び施設のバリデーションを得られるようにすることにあります。そして、そのバリデーションが長期間にわたって有効であるように、科学的、リスク評価に基づくリスクに応じたマネージメントから体系化したC&Q評価プロセスを通じて、以下の最終ゴールを目指します。

  • 労力及び要する時間の軽減化
  • 収量の増大化
  • プロセスに要するコストの削減

<参照>

[1]    ISPEベースライン ファーマシューティカル エンジニアリングガイド Vol.5コミッショニングおよびクオリフィケーション(C&Q)

[2]    EU GMP Guide to Good Manufacturing Practice for Medicinal Productsガイドライン 添付資料15”Qualification and validation”より

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