FATとSAT: その違いと重要性

by Julián García Tautiva Commissioning & Qualification Consultant @ PQE Group

FAT(工場受入試験)とSAT(現場受入試験)のコンセプト

工場受入試験(Factory Acceptance Test;FAT)と現場受入試験(Site Acceptance Test;SAT)の2つの段階は、製薬企業だけでなく臨床開発・医療機器企業にとって、導入する全ての機器やシステムに適用することから、大変重要になります。

この2つの段階は、規制対象となる環境においてバリデーション・ライフサイクルの一部であり、企業が実施するバリデーション作業に関して、バリデーション方法論、実施スケジュール、バリデーション作業の順序とそれぞれの責任の所在を明記した、バリデーションマスタープラン(validation master plan;VMP)に組み込む必要があります。

FAT & SAT Differences_Site PQE

「工場受入試験」の定義

FATは、設計時適格性評価(design qualification;DQ)の評価ステージに続いて実施するもので、機材やシステムを製作して納品する企業が、受注したシステムが規制要件及び発注企業の要件を満たしていることを証明するために、その納品前に実施する様々な試験を指します。 

FATを実施する主な理由には、 発注企業が購入した機材やシステムがハイ・スペックであることをその発注企業に証明すること、その機器やシステムの各構成物とその包括管理システムがその機能通りに運転できることを確認すること、発注企業側の努力、時間、金の無駄を省くことに繋がること、そしてその納品しようとする機材やシステムが設計仕様通りに運転できるか否かを検証・評価することにあります。

ISPE Baseline Guide Volume 5コミッショニングおよびクオリフィケーション第2版によれば、「FAT終了後、発注企業の代表者が、発注したシステムが納品可能な状態にあるか否か、事前に取り決めた納品条件を満たしていることを確認し、納品企業と同意に至る」ということになります。

「現場受入試験」の定義

SATは、FATに続いて実施する適格性評価ステージです。納品された機材やシステムに対して発注企業が現場で実施します。このSATによって、納品された機材やシステムが発送・搬入の際の障害もなく無事に納品されたことを文書で証明する作業になります。

FATとSATの相違点 

FATとSATの主な違いは以下の通りです:

  • 実施場所:FATは受注した機器・システムの製造所で、SATは納品された発注企業側の現場で実施する。
  • 環境条件:製造所と納品現場では温度や湿度が異なる。実地条件となる圧縮空気や蒸気の使用は納品先で行うSAT実施時にのみそのデータは得られる。
  • 文書:FAT報告書は仔細に渡るが、SAT報告書は簡潔である。

FAT 及びSATは何故重要か

ユーザ要求仕様書に沿って製作された機器やシステムを、実働させた際に全機能が正しく運転できるようにFAT及びSATの段階で調整を行えます。FATを実施せず納品後に問題が発覚した場合に比べ、受注企業の下でFATを実施して事前に問題を解決する方が、はるかにコストと時間の浪費を減らすことができます。

また、次に述べる「てこの原理戦略」を採用することで、その後のクオリフィケーションにおける時間の無駄を省くことにも繋がります。

「てこの原理」戦略とは?

ISPEの定義によれば、「てこの原理」戦略とは「施工及びコミッショニングの際に適正に実施し文書化した評価活動の結果を、据付時適格性確認(Installation Qualification;IQ) 及び稼働性能適格性確認(Operational Qualification;OQ)のクオリフィケーションのサポートとして活用することにより、不要な重複作業を避け、クオリフィケーションに要する時間を短縮できる」というものです。

この戦略を正しく利用することで、このステージで求められる以下の挙げるポイントを実践・カバーし、時間の無駄を省いた適格性評価試験を実施します。;

  • 文書化の実践規範(いわゆるGDP)
  • 事前に決定した適用範囲とその深度
  • 生データの定義
  • FATの場合なら、ユーザー要求仕様書(User Requirements Specifications;URS)に明記されている、或いは最新の注文書に提示されたクオリフィケーション・評価の範囲

機器やシステム製作企業が作成する文書には、FATやSATでは受注者・発注者双方が文書をレビューし承認する必要があります。

 FAT及びSATで一般的に実施する試験

FAT実施前には、図や文書とそれらの検証記録、配管計装図(Piping and Instrument Flow Diagram:P&ID)と 検証記録、重要機器校正記録、コンポーネント(構成)の検証記録、ソフト及びハードウェアの検証記録、入力/出力の検証記録、機器の安全装置・インターロックシステム、アクセス権限、レシピ管理及びコントローパネルの検証記録などを含む文書類一式を用意する必要がある。

EU GMPのAnnex 15には、「FATによる検証は、機器・システムの納品後に現場受入側で実施するSATによって補填される」と書かれている。SATは設置した新たな製造システムがGMP要件を満たしているか否かを検証することを主目的としており、通常、重要機器校正記録、入力/出力の検証記録、配管計装図と 検証記録、スタートアップ手順、施工未完了一覧表の打出し確認などである。

結論 

以上ご説明致しました各クオリフィケーションの評価は、製品製造で使用する機器やシステムの質、効率、規制要件の遵守、及びパフォーマンスの点で十分であることを証明する重要なステップです。このクオリフィケーション試験を実施し適格性を示すことで、以降のクオリフィケーション段階に進められるわけです。FAT及びSATを無事にクリアするためには、何れにおいても、この両適格性評価だけでなく試験実施戦略やURSに精通し、発注者・受注者間のコラボを実現できる信頼できるプロを、発注者側及び受注者側双方に持つことがキーポイントになります。

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