EU PVシステムの要求事項 – シグナル管理

by Alex Xuereb, QA/PV specialist @Quintian Pharma

医薬品の安全性監視システムにおいて、シグナル管理をする際に直面する問題について

ファーマコヴィジランス(PV)システムの重要な部分は、シグナル管理である。欧州委員会実施規則No520/2012の条項19のとおりに、製造販売業承認取得者(MAHs)は、医薬品または医薬品有効成分に関する新規または変化する有害事象の特定が法的に求められる。

適切な科学的手法を用いて、これらの新しい有害事象をどの様に特定し、検証するかを決定することは課題である。

Requirements of an EU PV system_Site PQE (1)

現在のMAHsの課題

多くのMAHsが以下の課題に直面している: 

  • 大量の安全性データ、時にフォームがバラバラな有害医薬品レポート(ADRs)あるいは個別症例安全性報告(ICSRs)などが収集され、品質的に全く異なった内容で提供される 
  • 収集されるデータは分散しており、変化がしっかりとモニターされ、審査のために比較されるような臨床試験から収集される高い品質を有していない 
  • シグナル管理についてのEUガイドラインは、よくある様に解釈と新機軸の余地を残している。これらのガイドラインを、機能的なPVやシグナル管理システムに置き換えようとするトレーニングを受けていない人々にとっては困難となる。 

これらを考慮して、この記事は以前はシグナル管理の義務が実践されず、これを是正するためのファーマコヴィジランスシステムに関する変化も起きていなかった、不適合であったEU市場で広く認められた製品とMAHの事例を用いてEU内のシグナル管理のフローを簡潔に提示する事を目的としている。 

シグナル管理の一般的なフローは次の通り: 

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シグナルの検出 

シグナルの検出は、特定の医薬品が有害事象に何らかの関係を持っていることを示唆するような、安全性データのトレンドの初期把握に関するプロセスを含んでいる。シグナル検出の方法は、大きく二つのサブカテゴリに分けられる: 
統計的解析アルゴリズムに基づく非比例的分析法、および製品に関する数件の報告が寄せられた場合に一般的に用いられるクリニカルレビュー法である。 

シグナルの源は多様であり、多様な報告内容を含んでいる。EU内では、シグナルの検出はEUの安全データ処理システムであるユードラヴィジランス(EV)、より具体的にはEVデータ分析システム(EVDAS)に大いに助けられている。EVプラットフォームへの登録は、EUMAHsにとっては法的な要件であり、受領した全ての有害医薬品反応(ADRs)EVWEBプラットフォームを通じてICSRとして報告され、前述のEVDASプラットフォームを通じて他のMAHsとも共有される。 

この文書のテーマであるMAHの場合、安全性データはEU GVPガイドラインに適合しない方法で収集されていた。週7日、24時間稼働するADR収集システムは導入されておらず、医療論文のモニタリングも未熟でローカル論文だけを対象としていた。厳しく言うならば、そのMAHEVプラットフォームに登録されていながら、利用が認められていたシグナル管理ツールを利用していなかった。 

EVDAS登録は実施されておらず、そのためにシグナル検出のための統計オプションは極めて限られていた。そして直接受領した整理されていないADRsで構成された限られた安全性データが用いられていた。 

EVでは、EU全体でMAHsによって報告された安全性データは、中央の一か所でEVDASを通じて確認することができ、ビルトインされた統計ツールやバリデートされたデータの膨大なプールを用いて、容易に分析可能である。EVDASのユーザーは潜在的なシグナルについて医薬品有害事象のコンビネーションの検索が可能で、これらの統計ツールを結果に適用できる。これらの統計ツールとして: 

  • 相対的可能性(ROR) RORDECsに適用される非比例的分析法である。簡潔に述べると、RORは医薬品によって生じるわずかな有害事象の可能性であり、データベースにある他の全ての医薬品によって起こる同様の事象の可能性と比較される。例えば、ROR3と等しい場合、貴社の医薬品によって生じる有害事象の報告可能性がデータベースにある他の報告の中にあるその有害事象の報告可能性の3倍高いことになる。 
  • 重大な薬物反応(SDR) – 特定のDECについて、もし多数の解析基準が一つも合致しない場合、EVプラットフォームではSDRとして分類され、より詳細な分析が求められる。これらの基準としては: 
   - 95%の信頼区間の低い側が1より大きい; 
   - 事象の合計数が5以上; 
   - 重要な医薬品有害事象に分類される 

PV標準への適合を保証するために、MAHのための新しい手順書が用意されていて、シグナル管理ツールとしてのEVのパワーを最大限活用できる。EVDASプラットフォームへの登録が行われ、シグナルを検出するために掲載されている統計ツールの適切な使用法が書かれた、シグナル管理のマスター手順書のドラフトが作られ、受領した報告書数やROR値、SDR分類などシグナル管理の次のステージにパスするためのDECsの目標値が明記されている。申請やEVからICSRsとしてのADRsを出力する手順、グローバル医療論文のモニタリングなどをカバーした、より詳細な手順書のドラフトが作られている。 

 

シグナルの検証 

潜在的なシグナルとしてDECが検出されると、シグナル検証ステージに送られる。 

シグナル検証ストラテジーは多様である。シグナルバリデーションに対するMHAsの要望を充足するために、ICSREVデータベースから得られた情報のレビューがSDRSと認識されたDECsのために1ステップとして追加される。 

このレビューの解析基準は、報告、報告の源、使用される情報の品質(重複報告、コードの間違い、他)で使用される医療用語の評価を含んでいる。それは、報告に信頼できる一時的な関係性が含まれているか、異議の申し立て/異議取り下げ/再申し立てかなどに関わらない。 

潜在的なシグナルはEV以外のPVデータベース上のDECsの拡張検索を通じてさらに検証される。最終検証ストラテジーとして、重要と特定されたいかなるDECも、予め定義された検索語を用いてオンライン医療論文データベースで検索される。医療論文は安全性情報の高品質ソースである。 

情報の共有  

検証されたシグナルが特定されると、MAH欧州医薬品庁と医薬品が承認されている関連のある国の規制当局の双方に報告する義務がある。事例のMAHの報告タイムラインは、手順に記載されている:  EUが指定した特定の成分および製品で検出された検証シグナルはEURDリストおよび/または安全性の変化量に準じて報告されるPSURsの期間内に、シグナル検証から30日以内に個別の通知として報告する必要がある。緊急と判断され、迅速な規制行動が必要な安全性の課題は、新たに発生した安全性の課題として3日以内に報告する必要がある

結論

シグナル管理は、難解で複雑な課題であり、時として処理が難しい。一つのやり方で全てに対応する様な方法は存在しない: シグナル管理のストラテジーは、それを適用する製品/成分に深く依存する。この文書で示したとおり、クインチアン・ファーマは、シグナル管理ストラテジーを要件に適合させ、あらゆるMAHsおよび製品に対して導入することが可能である。 



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