ファーマコヴィジランスデータ: 製薬企業の課題

Daniela Rota - PV Unit Manager & GVP Compliance Advisor @PQE Group; Marianna Esposito - GCP Unit Manager, GCP Advisor & Auditor @PQE Group; Francesco Abbate - CSV/CSA & Data Integrity Advisor @PQE Group

製薬企業は、日々ファーマコヴィジランスのデータを定められた書式で収集し、安全なバリデートされた環境で決められたワークフローに従って処理することを求められます。収集すべきデータの件数は増大(ワクチンのADR(副反応報告)など)しており、その処理の必要性も高くなっています。

ファーマコヴィジランス用データベースのサプライヤーは、それら製品の能力向上、安全性向上、コンプライアンス維持の要求のために、機能向上を進めています。

データは、集計された報告書の分析と企業自身および監督当局によるシグナル検出活動のために、構造化されている必要があります。

企業は要求事項を充足するための能力を必要とし、社内のニーズに合致するツールとサプライヤーを選定しつつ、同時に技術的および規制適合のための開発も見据える必要があります。

最大の課題に直面するファーマコヴィジランス部門が留意する事項:

  • データフォーマット
  • データロケーション

データマイグレーション

Pharmacovigilance Data challenges for Pharmaceutical Companies - int

データフォーマット: ICH E2B(R3)およびIDMP標準への準拠

2022年6月30日の時点で、ICH E2B (R3) 様式に基づいたISO 個別症例安全性報告書 (ICSR) 標準が、EudraVigilanceへのICSR報告に必要です。それに加えて、医薬品剤型と投与経路でISO標準用語を適用することが必須です。

ICH E2B (R2) 様式の適用は、徐々に廃止されると思われます。しかしながら企業は、R2様式およびEU外の国々の要求に沿った書式でICSRを送信する必要があります。

これに苦慮する企業の疑問は: どのようにして2022年6月30日までにISO/ICH E2B(R3) 様式の安全性報告書の適用を間に合わせたら良いか? どのようにして国外の規制当局が求める他の様式で報告を行うための柔軟性を維持しながら、E2B(R3)様式でEudraVigilanceへの症例の送信を準備したら良いか? 自社の安全性データベースは、EUおよびEU外の報告書要件に対するコンプライアンスが保証されているのか?

患者の安全の向上に関するもう一つの変更は、安全性データと医薬品情報および関連する規制文書とのリンクです。全ISO採用国で上市されている医薬品に関する用語および構成の標準化指針として、EU IDMP製品管理サービス導入ガイドV2.0 (EU IG v2) が2021年2月22日にリリースされました。IDMPはISO標準を用いて条項57をサポートするために、現在のEMAが開発したxEVMPDの構成に代わって設計されました。企業はISO IDMP/SPOR標準に基づく用語を使用できるように、期限までに準備を完了するための導入計画を立案する必要があります。IDMPが求める広範なデータの収集と管理は、PV、臨床試験、薬事業務、学術、IT/CSV、製造/CMC、配送など企業および提携先の多くの部署に影響が及びます。それら全てが協同チームに加わって、現在利用可能なデータを分析し、新しい構成のシステムに移行するための最適なソリューションを見つけ出す必要があります。あなたの会社は正しい方向に進んでいますか?

 

データロケーション: クラウドコンピューティングサービスの利用

GxP規制を受ける業界は、新しいテクノロジーの採用に総じて他の業界よりも保守的で、クラウドベースのシステムも例外ではありません。

患者の安全を守るために、規制される企業(医薬品、医療機器企業など)は、広い規制管理下にあり、如何なる新技術も適用前にあらゆるリスクについての分析を求められます。それでもなお、それらの企業はビジネスプロセスの効率化とコストの削減を推し進めます。

通常クラウドコンピューティングサービスは、インフラストラクチャを所有するサードパーティのプロバイダーが提供します。クラウドコンピューティングは近年最も話題になる技術の一つで、それが提供する利点によってアナリストやメディアの注目を集めています。

多くのクラウドコンピューティングに当てはまる潜在的な利点は以下の点を含みます:

  • コストの削減、企業は資産を費用に置き換えることによって、資産を最小化できる
  • クラウドコンピューティングの柔軟性により、消費者の要求を充足するためのピークタイムのIT能力をスケールアップできる
  • 複数の冗長化されたサイトによるサービスは、事業継続および災害復旧の助けとなる
  • クラウドサービスプロバイダーが、PCにインストールする必要が無いアプリケーションのシステム保守を行い、社内IT部門の作業負荷を軽減できる
  • 場所を選ばずにシステムにアクセス可能なインフラストラクチャにより、モバイルワーカーの業務生産性が向上する
  • 高い可用性、サービスを中断したり、アプリケーションの更新を必要とせずに、使用されているサービスに新しいサービスを追加できる
  • IT知識とIT投資の必要性を減らせる

製薬企業での規制関連データの処理にこれらのサービスを用いる場合、新たなリスクが生じる。そのリスクとは:

  • 企業の管理が及ばないITインフラストラクチャにデータとシステムが導入される
  • ソフトウェア(SW)の保守(例.変更の適用)およびデータセンター管理(例.セキュリティ管理)の監視ができない
  • SWアプリケーションおよびITインフラストラクチャを提供するために異なるサプライヤーが混在する
  • サイバーセキュリティのリスクがある
  • 適切なバリデーションおよび認証アプローチが必要

これらのリスクをどの様に緩和すれば良いでしょうか?

 

M&Aおよび安全なアップグレードのためのデータマイグレーション

製薬企業は、様々な国で潜在的な事業拡大のために、企業の買収や売上増のための製品の買収などの合併と買収(M&A)を進めています。

これは、一つの企業から他の企業に対して、時に大量のデータを移行する必要があることを示しています。それに加えて、安全なデータベースは定期的に新しいテクノロジーでアップグレードされるため、レガシーデータベースから新しいデータベースに全てのデータを移すことが必要となります。時としてデータマイグレーション活動は、最適な結果を得るために伝送データの同期をとらなければならない多くの繰り返し作業によるチャレンジベースの作業になります。マイグレーションを失敗させる主な要因は:

  • 不完全なデータマイグレーションプラン
  • システムまたは機能についての知識の不足
  • 業務ルールの取り違えまたは安全なDBアーキテクチャへの不適切なロジックの適用
  • 不適切なデータ構造設計
  • システム間での不適切なデータマッピング
  • 不十分なデータ確認およびバリデーション

データマイグレーションでのデータの真正性、完全性、信頼性をどの様に保証しますか?

 

製薬企業は規制関連データの完全性に重大な責任を有する

今日、企業は症例情報の受領、調査、報告など日々の業務に必要な時間を最小化し、同時にデータインテグリティの要件へのコンプライアンスを高いレベルで保証するために、いくつかの市販ソリューションの破棄を進めています。

技術の進歩によって、企業はソリューションを保有するだけでなく、ウェブベースまたはクラウド、あるいはマルチテナントのソリューションを利用可能です。後者については、単一インスタンスのソフトウェアがサプライヤーから提供され、サーバー上で稼働するものを複数の組織で利用することが可能で、各組織は論理的に構成された固有のテナントとしての専用の環境を利用します。加えて、リアルタイムデータを提供するウェアラブルデバイスとソーシャルメディアの出現は、新しい情報ソースの構成要素となって、新しいPVの義務事項となる可能性があります。それ故に、管理プロセスへの影響が最小となるように新しい要件や変更に迅速に適応できるような、先進的な最新の機能を持つシステムを持つ必要があります。これらのシステムは重複しているストレージを排除し、提出の遅れによるコンプライアンス非対応のリスクを減らし、データベースから抽出したデータを用いて作成する規制関連文書および報告書の集約の準備を促進し、データインテグリティに違反するリスクを高めるツールや外部アプリケーションの利用を省きます。

全体のプロセスがALCOA+のデータインテグリティ要件を満たしていることは、症例情報の受領、調査、報告のためのシステムおよび設備にとっては必須です。この関連で、システムが国際的なガイドラインに従った適正なバリデーションプロセス(例.GAMP5)に沿ってバリデートされていることが重要で、関連する規制でも求められています。

クラウドまたはマルチテナントシステムの利用は、該当サービスまたはシステムを提供するサプライヤーの参画によって、バリデーションおよび管理費用を低減するメリットがあります。一方で、例えばマルチテナントシステムでは、定期的またはサプライヤーが計画したシステムのアップデートについて、システムと管理されたプロセスへの影響を特定して対処するための適切な変更管理プロセスが必要です。

安全なデータ管理システムには、カスタマーのプロセスを順守するためのハイレベルのコンフィグレーション(またはカスタマイゼーション)が必要です。これは、システム導入において過小評価しないために必要な重要要因であり、企業方針が規制当局の要求に対するコンプライアンスを確立していることを保証し、企業の要件を満たすために、サプライヤが提供する標準システムやバリデート済みシステムについても慎重な初期分析が必要とされます。そして、最終的にバリデーションフェーズおよび運用プロセスにおける逸脱のリスクを最小化します。

データの抽出に広く利用されているクエリや外部ツールの利用や分析は、もう一つの重要な要素で、規制当局の決定やデータ品質に影響を与えるため、企業による厳重な注意とバリデーションが求められます。

結論として、規制当局の要求事項、疾病の複雑性によるAE症例の増加、データインテグリティに関する当局の精査の増加、コスト削減の要求、新しい情報ソースおよび新しいPV義務事項などの変化は、より多くのデータをより短時間で処理するために、リスク/ベネフィット分析やシグナル管理にフォーカスしたより高度な安全データ分析ツールを必要とします。

これら全ての要因は、マーケットに投入された医薬品の日々のモニタリングおよび規制当局との継続的な交流におけるファーマコヴィジランスの課題です。

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