製薬及び医療機器業界におけるクラウド利用(CSVを考える)

峠 茂樹(CSV/CSA & データインテグリティ マネジャー・PQE Japan株式会社)

はじめに

NIST(米国国立標準技術研究所)によってクラウドの定義が公開されたのは2011年9月のことであった。それから13年がたち、もはや企業においてクラウドはごく普通に利用されている。しかしながら、日本の医薬品業界のGXP領域においてに本当に適切で、効率的な使用がされているとは言い難い。例えば、規制対象企業として求められるドキュメント作成やクオリフィケーションを適切に行い管理しているのであろうか。 

 

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規制対象業務におけるクラウド 

製薬業界は他の業種に比べてもクラウドの導入が遅れていた。それは、GXPと呼ばれる業務については多くの規制があり、保守的な傾向があった。システムを導入する際にはコンピュータ化システムバリデーション(CSV)が必要であり、そのクラウドへのアプローチが明確ではなかったなどである。しかしながら、デジタルトランスフォーメーション(DX)などでクラウドのメリットは明白であり、徐々に浸透している状況である。規制当局としても、欧米を中心にクラウド使用時のガイダンスが出てきており、どのように使用すべきかのコンセンサスが出てきた。 

 

クラウドの導入アプローチ 

クラウドを導入する際には何となくベンダの言うとおりにクラウドを選定してはいけない。クラウドを導入する際には、導入するクラウドベンダに適格性があるかを審査する必要がある(ベンダクオリフィケーション)。リスクベースで必要な文書を作成あるいは集めていく必要がある。クラウドのサプライチェーンを確認するのもこの時である。また、定期的にベンダを評価して、適切に運用されていることを確認する必要がある。この導入アプローチについては手順を定めて置き、適確に実施することが大切である。 

 

クラウドのバリデーション/クオリフィケーション  

クラウドのバリデーションの方法はサービスモデル(SaaS、PaaS、IaaSなど)によってずいぶんと違ってくる。SaaSのようにアプリケーションが提供される場合では、従来のバリデーションのような成果物ベースのアプローチをするのではなく、ライフサイクルの有用性ベースのアプローチに移行し、記録を残すためだけの作業を減らすべきである。一方、IaaSのようにインフラを提供するサービスの場合では、まずインフラが適切に仕様化され、設計され、設定され、デプロイされていることを保証することが必要となってくる。この部分の管理についてはIT品質管理システムを利用することにより、管理効率化を図るようになってきている。

 

まとめ

近年急速に普及してきたクラウドに対して、どのようにバリデーションをすればよいかについては、明確なルールはなく、社内での担当者も決まっていない。ともすれば、従来のコンピュータ化システムバリデーション(CSV)をそのまま当てはめてすることが多い。結果的に有益でない文書を作成することもあったと思われるが、クラウドの性質を理解してバリデーションを実施することにより、より効率的なバリデーションが実施できると考える。 

 

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