日本製薬業界におけるCSVの課題とCSAへの流れ

峠 茂樹(CSV/CSA & データインテグリティ マネジャー・PQE Japan株式会社)

はじめに

昨年(2022年)は7月にGAMP® 5 2nd Editionが出版され、9月にはFDAからCSAドラフトガイダンスが公表された。そういう意味ではコンピュータ化システムバリデーション(CSV)にとっては一つの区切りの年だったのかもしれない。しかしながら、海外の状況を見てみると、これまで実践され始めていたCSVが明文化されただけのようにも見える。一方で日本国内では、多くの企業や現場で従来通りの型にはめたCSVが主に行われており、DXを進めていく際にCSVが大きな障害になりつつあるのではないかと危惧する。

 

banner insghits_The Challenges of CSV and the Flow Towards CSA in the Japanese Pharmaceutical Industry_1 (1)

CSVにおける現状と課題

日本での医薬品製造業におけるCSVを実施するにあたり、多くの企業が厚労省監麻課から2010年に発出された「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン(以後、適正管理ガイドライン)」を遵守している。しかしながら、この適正管理ガイドラインにはクラウドやブロックチェーン、AIなど、その当時一般的でなかった技術への対応については記載されていない。

また、システム間においてデータ連携がされたり、多くの機能を持つようになった場合、従来通りのテストを行おうとするとテストだけで疲弊してしまうことになりかねない。このため、芋づる式にCSVの対象を広げないために、あえて、データを連携させないと言った本末転倒な形でのシステム化が行われているのではないか。

こうした中、クラウドやAgileなど最新の技術に対応してCSVするためのヒントを与えてくれるガイドとしてGAMP® 5 2nd Editionが登場し、テストのあるべき姿を再考する形でCSAが出てきたと思える。

CSAが必要とされる背景

これまでのCSVで実施されてきたテストについては、全てのテストをスクリプトベースで実施し、実行結果とエビデンスの両面で詳細な記録を残してきた。このため、テスト実施に過度の負担がかかり、なるべく最小限のテストを実施するようにして来たのではないだろうか。

このように硬直的なテストに対してもっと自由なテストとして考えられたのがCSAだと思われる。リスクアセスメントによってテストの程度を決めてリスクの低いテストにはテストを簡略化することを可能としている。

まとめ

適正管理ガイドラインは実践的であり、実際のCSV作業に当てはめやすいという利点はあるが、発出から13年を経過し、適正管理ガイドラインのみをあてはめて、効率的で十分なCSVを行うことは難しくなっている。CSAなど、技術進歩に見合った新しいCSVを取り入れていく必要がある。

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