FemTechにおいてデータが果たす重要な役割

by: PQE Group

女性のヘルスケアに関するニーズは、これまで十分に配慮されていなかったため、今もなお解決されていない課題が残っています。近年のテクノロジーの進歩により、こうした課題の一部には対応できるようになり、女性のヘルスケアへの考え方は見直されつつあります。しかし、臨床研究における大きなギャップを解消するには、まだ多くの課題がの残っています。臨床試験において、男性の生理学に基づく研究結果が両性に普遍的に当てはまるとされてきたことから、女性特有の生物学的差異や病気の進行・治療効果への影響が無視され、深刻な影響を与えてきました。これは最近始まった問題ではなく、女性が長年直面してきた課題であり、今後は女性のニーズや特有の疾患(子宮内膜症、慢性骨盤痛、多嚢胞性卵巣症候群など)を正しく理解し、優先的に対応していくことが重要です。さもければ、多くの女性が適切な医療を受けられない状況は続いてしまいます。


長年にわたり、女性の健康や疾患への研究や注目が不足していたため、女性に特化した医療や治療を受けることはほぼ不可能でした。それは解決策が存在しなかったからではなく、それを導くデータが単純に存在しなかったためです。何が欠けていたのか、そしてこの状況を改善するために何ができるのかを理解するには、データに基づいて状況を見極めることが必要であり、それによりより具体的な対応が可能になります。さらに、過去20年間でこの課題に対処するための動きが大きく進み、女性が正確な診断にアクセスするだけでなく、臨床研究に参加し、個別化された治療や医療ソリューションの開発に貢献できる環境が整ってきました。これは主に、スマートな個人用デバイス、医療機器、女性の健康トラッキングアプリの急速な発展によるものです。

Data In FemTech_Blog

臨床データと医療機器がFemTechの未来を形作る仕組み

前述のように、女性の健康には「一律のアプローチ」は存在しません。そして、今日のフェムテックの急成長を見ると、この比較的新しい業界が、女性の健康データを活用して期待を超える成長を短期間で実現してきたことがわかります。ブレスレット型デバイス、生理トラッカー、ホルモンモニターなどの医療機器は、今では多数存在し、女性特有の疾患や異常をより早く検出・モニターする手助けとなっています。これらのシンプルでありながら高度なウェアラブル機器は、診断機器と組み合わせることで、女性がこれまで以上に自分の健康状態を把握し、自分の体について知ることを可能にしています。たとえば、子宮内膜症のように、従来の方法では発見や正確な診断に時間がかかる治療困難な疾患を持つ女性にとっては、バイオマーカーの特定に基づく新しいデータアプローチが非常に有益です。AI(人工知能)を活用したデータ解析により、通常の健康診断や医師の診察で見逃されるかもしれない異常や症状のパターンを見つけ出すことが可能になっています。

ここまでテクノロジーに焦点を当ててきましたが、臨床試験や女性の健康に関する法的・規制的な分野も、ここ数年で注目されるようになっています。EUとアメリカでは特にこの傾向が顕著です。たとえば、ICHの新ガイドラインやEMAによって施行されるEUの臨床試験規制では、すべての患者群に「合理的な代表性」を求めており、女性を含むすべての群が重要な医療研究で適切に代表されることを保証する大きな一歩となっています。しかし、紙上の規定があっても、特に早期段階の薬物開発や前臨床モデルにおいて、試験実施者がこれを実行し達成するためにはまだ多くの課題が残っています。 

FemTechにおけるAIの活用はゲームチェンジャーであり、長年待ち望まれていたソリューション、すなわちAIによるデータ分析を提供しています。女性の健康にとって、これは手元のデータを用いて健康を予測し、個別ケアを開発することが、かつてない方法で可能になったことを意味します。

 

女性の健康モニタリング・追跡アプリにおけるAIの台頭 

女性向けヘルスケアアプリは、消費者向けFemTechを前例のないレベルで世界的に成功させ、かつて「ニッチ」と見なされていた産業を、Statistaの最新レポートによれば1,177億ドルに成長すると推定される巨大産業へと押し上げました。こうしたAI搭載アプリは、スマートなウェアラブル技術と組み合わせることで、ユーザーが自身の健康データを送信し、バックグラウンドでアプリがデータを収集・分析することで、疾患や健康状態をより理解しやすくしています。しかし、こうしたアプリが収集するデータは構造化されておらず一貫性に欠けるため、臨床データの代わりにはまだなりません。とはいえ、これは「役に立たない」という意味ではありません。これらのアプリは、臨床グレードの診断や医療機器と組み合わせることで、より強力で効果的になります。

 

FemTechの次のステップ、そしてさらなる発展に向けて

技術は、女性の医療ニーズが障壁なく満たされる未来へと私たちを導いており、これはデジタル主導の現代社会で徐々に現実となりつつあります。これを実現するために、私たちフェムテック業界の関係者は、単なる技術革新を超えて、ライフサイエンス産業全体との分野横断的な協力を促進する必要があります。バイオテクノロジー、学術界、生殖内分泌学、婦人科学などの分野の専門家やパートナーとの協力は、業界の前進を可能にするだけでなく、長期的に見て、より強力でエビデンスに基づいた解決策を構築し、個別化された女性向け医療をすべての人が利用できるようにするための大きな力となります。テクノロジーが進歩し、よりアクセスしやすくなったとはいえ、これらのツールを改良し、業界や女性が直面する現在の課題を克服する鍵となるのは、依然として「質の高い構造化されたデータ」です。構造化されたデータを使うことで、私たちは単に予測の精度を上げるだけでなく、女性の健康がどのように理解され、診断され、治療されるかを再定義する本当のチャンスを手にすることができます。女性の健康とウェルビーイング全体について言えることは、「知らずに理解できないもの」は治療できないという事実です。そして、理解せずに治療しようとすれば、効果がないだけでなく、患者にとって有害で危険となる可能性があります。だからこそ、より正確で包括的な臨床試験、そしてデジタルデータの収集・分類・分析における、より正確で標準化された手法を引き続き推進していく必要があります。これにより、女性が利用するツールや機器が、安全で効果的であることを確保することができるのです。

 

参考文献 :  

  1. FemTech Market Size Worldwide 2020–2027. Statista, 2024, https://www.statista.com/statistics/1483460/femtech-market-size-worldwide/
  2. Closing the Data Gaps in Women’s Health. McKinsey & Company, 17 May 2022, https://www.mckinsey.com/industries/life-sciences/our-insights/closing-the-data-gaps-in-womens-health
  3. Why We Know So Little about Women’s Health. Association of American Medical Colleges, 7 June 2022,
     https://www.aamc.org/news/why-we-know-so-little-about-women-s-health. 
 

 

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